2011年12月26日。
ソーシャルセンシングラボとして初となる公開ラボが開催されました。
「ソーシャルセンシングラボ」を社会に開き、社会と関わり合う。
クローズドな研究会として始まったソーシャルセンシングラボ。
しかし、6ヶ月間の研究会を経て、このラボの面白さに目覚めた私達は、
ラボでの議論を広く一般の方にも公開していきたいと思うようになりました。
色々なことがあった2011年ですから、その振り返りも兼ねて、
皆さんとソーシャルセンシングとは何かを考えてみたい。
ソーシャルセンシングという言葉をどのように受け止めるのか知ってみたい。
そういう思いからの公開ラボでした。
年の暮れ、しかも平日月曜の午後5時からという時間に、本当に人が集まって
くれるのかドキドキしながら待ちましたが、当日は100名近い人たちが参加してくれて、
大盛況のうちに終えることができました。
公開ラボは3部構成。
第1部では、ソーシャルセンシングラボを主宰する井上よりソーシャルセンシング
の概念を紹介した上で、5人のソーシャルセンサー(=ソーシャルセンスの高い人)
の皆さんから、それぞれのものの見方や感じ方についてプレゼンテーションをして
頂きました。
「What’s Social Sensing? Why Social Sensing?」
ソーシャルセンシングラボ主宰、日本総研 井上 岳一
まず、ソーシャルセンシングラボ主宰の井上より、ソーシャルセンシングの考え方
について報告を行ないました。
そもそもソーシャルセンシングという言葉に思い至った背景には、
企業や社会のサステナビリティ意識の問題があったと井上は言います。
では、ソーシャルセンシングとは何か?
6ヶ月間の研究会を通じてたどり着いたひとつの結論は、
「社会に自分を開いて、社会と関わりながら、社会を感じ取る」ということ。
そして、ソーシャルセンシングがなぜ必要なのかを説明するのに、
井上は『現場感』という言葉を持ち出しました。
-Why Social Sensing?
『現場感』とは、「リアリティをもって場所を生きている」、
「環境や人間とリアルに関わり合っている」という感覚。
その『現場感』が今の仕事の現場にはなくなってしまっている。
この『現場感』を取り戻すために必要なのがソーシャルセンシングなのではないか。
そう考えるようになったきっかけは、東北の被災地を訪れたこと。
被災地に行くと圧倒的なリアル感、現場感を感じる。
そして、一面瓦礫の山に覆われた風景は、話にしか聞いたことのなかった
終戦直後の風景を思い起こさせたと言います。
ソニーやホンダの創業は1946年。
文字通り瓦礫の山の中から短期間で世界レベルにまで成長できた背景には、
こういう風景の中で創業者達が持っていた圧倒的な現場感があったのではないか。
実際、1946年に書かれたソニーの設立趣意書を見ると、
井深大にとって、会社をつくる、事業を興すということは、
日本を再建することと同じだったということが分かる。
それぐらい社会と会社というものが近かったのです。
では、会社に『現場感』があると何がいいのでしょうか。
ひとつは、判断を間違えにくいということ。
そして、現場を見ているからこそ、
インスピレーションやアイデアが生まれやすいということ。
加えて、使命感や大儀が生まれやすいということもあるのではないかと言います。
-いかに関わり合うか
このような現場感を会社が取り戻すために必要なのは、
社会と関わり合うことです。
このために例えば、
会社とは別に社会と関わる機会を持つ。
今であれば、ソーシャルメディアでの関わりもここに含まれます。
或は、会社に軒下のような空間、社内外の人間が自由に交流できる場をつくる。
会社そのものを社会化するというのもあるでしょう。
多様性の面でも、関わり合いの面でも、人が集まっている会社を社会の縮図にかえる。
このような活動がソーシャルセンシングなのではないかと井上は言います。
その根っこにあるのは結局「いかに関わり合うか」ということだ、と。
関わり合うに当たっては、いくつかのキーワードがあります。
自分を開く。つまり、自己開示すること。
そして、相手の話を聞くこと。
関わり合いのきっかけとなるテーマや場を持つことも重要だと言います。
自分を開き、相手の話を聞き、関わり合う。
そうやって関わり合うことで、人は変わり合ったり、
世界の見方が変わったりするということを、
6ヶ月間の研究会を通じて経験してきたと言います。
-参加者同士が関わり合う場
最後は、今日のラボをどういう場所にしたいか、という話で締めくくりました。
ひとつは、この後に話をする5人のソーシャルセンサー=ソーシャルセンスが非常に
高い人たちの見方や感じ方から、何かを学び、
感じ取ることのできる場にしたいということ。
そして、もうひとつは、参加者同士が関わり合うことを通じて、
自分の見方や感じ方を吟味できるような場にしたいということでした。
井上の話に引き続いて、5人の登壇者がそれぞれ15分ずつ、自身の体験を語りました。
(写真:シブヤ大学提供)